[本文引用]
シニアの方々とお付き合いしている中で、しばし自立ということがテーマになることが多い。
自立の反対が依存であるので、今のシニア世代は依存している人が多いのだろうか?
確かに、年金制度が破綻していなかっただろう30年ほど前には、平均的な会社員の人生が日本人の標準的なライフスタイルとして認識されていて、実際に60歳定年を迎えたら、後は、悠々自適な年金生活で余生を楽しむことが出来た時代があった。
まず、この状態は依存なのか自立なのかだが、自立していたと思っても私には違和感はない。実際、皆が頑張って高度経済成長期の発展の結果、国民総和で確立した制度であるのだから、その仕組みに乗っかって、老後を暮らすことは依存ではないと考える。
また、この時代に何らかの理由で生活保護を受けている人がそのまま高齢化して、一生生活保護を受けたとして、日本の様な先進国では制度上のセーフティネットが機能していると言う意味でも、これも依存とは言い難い。
自助、互助、共助、公助に照らしても、これは公助の部分だ。
では今の高齢化社会で、とりわけ自立が必要とされ話題になるのはなぜなのだろう。
その一つは、日本の働き手のほとんどが享受できたはずの年金があてにならなくなったこと。
もう一つは、想定以上に実際に人生が長くなったことである。そうすると、昔思い描いていたバラ色の老後生活と言うのは、ごく一部の人を除いて、すでに夢と化す。
人間と言うのは、昔の良かったことをすぐに忘れ去ることはできない。だからきっと多くの人が、昔の様な年金制度に支えられたハッピ-なシニアライフが復活しないかと切望している人が多いと思う。
しかし、この課題はすでに20年を越える歳月の間にも、現実的な解決策は国も民間も見いだせていない。要するに、極端に言えば、自分で解決するしかないのだ。
そういう意味でのシニアに自立が必要とされるのは必然の話である。
つまり、本当に困った状態になって来た、この先放っておいたらもっと困ったことが増える。ならば自立して、自分の行動や生活を変える。
自覚を持って行動する人が一人ずつ増えることによって、社会は変わる。いずれ国も変わる。こんな時期にあるのではと思う。
では、このシニアの自立、今のシニアだけが取り組めばよいのかということになるが、それは違う。極端に言えば、全世代である。このブログでも何度も書いているが、シニアの問題や課題は、結局、全世代の自分事なのである。
そういう意味では、皆がシニアの自立を邪魔しない。これは消極的な発想だが、今は、あちこちで、シニアの自立を阻害する社会である。シニアが元気に社会で活躍することさえ、疎まれたり、シニアは控えておくのが良いと言う考えも多い。
だから、言いたい。
まだ、シニアでない人は、自立しようとするシニアを積極的な応援する立場でありたい。とりわけ、50代を過ぎたシニア予備軍は、次は自分達である。
だからこそ、今のうちから、シニアになった時の自立のための準備をするのは言うまでもないが、今のシニアの自立を積極的に応援する。そして、シニア予備軍として自立の準備を進める自分自身も応援してもらう。
そうすると、順送りに世代がつながって、シニアの自立を歓迎し、応援する社会が出来上がる。
ビジネスの観点でも貢献できることもあるが、これは、環境や農業を応援する応援消費や共感投資の感覚と同じように自立を支援するのが良い。
なぜならば、以前呼ばれていたシルバー産業と言うような、ビジネス視点の切り口ではなく、社会の仕組みやインフラとしての共助的な部分を自分たちで創りだすことが重要である。
そういう意味でも、自助がベースになって、新しい互助、共助の仕組みが生まれてくるのが理想的である。
以上