[本文引用]
最近、おもしろい本を見つけた。
そのタイトルは、“実力も運のうち 能力主義は正義か?"。
出版会社のタイトルの付け方としても、学びがある。なぜなら、ほとんどの人が知っている言い回しは、“運も実力のうち”であるからだ。
私の仕事柄、お付き合いの中心は経営者だ。引退された経営者の方も多くなってきたが、一方で、70代でも80代でもバリバリ現役の方も多い。
こういう先輩方とお付き合いをしていると、ふと自分の人生も振り返る機会も増えてくる。
もちろん、自分自身が人生経験もそれなりになってきたこともあるのだが、先輩たちが異口同音におっしゃることに驚く。“自分は運が良いとおもう"、"今があるのはたまたまだった”、"運に恵まれだけ"。
こんな風なお話しに聞くと、確かになあ。という反応をしつつも、それなら人生は運で決まるのかという風に思う私がいる。
もちろん、経営者として仮に周りから見て成功していても、それが人生の成功とは限らない。実は、ご本人は全く成功とは思っていないことも多々ある。それに加えて、そもそも成功と言う定義を否定的にとらえる人もいるし、人生の目標ですらない人もいる。
私も成功と言うのはほとんど意識していないし、誰と比べてと言うのもナンセンスだと思っている。私は成長と言う言葉が好きだ。
田坂広志さんの“成功とは成長である”という言い回しが特に好きだ。
もちろん、人間の気持ちや想いは、単純なものではないが、自分の行動原則や生き方と近い言葉には惹かれる。そんな私は、実は、あまり運も実力のうちという言葉は好きではない。
一つは、先ほど書いたように、結果が出ない人、失敗を続けている人にとっては結構重い言葉でもある。つまり、人生は、運がないと成功しない。私流に言い換えると成長しないという事になる。
もちろん、結果を出した人が、ご謙遜の意味で言う場合も多いし、本当に運としか思えないような偶然で、劇的な結果が出ると、自然と、運がよかったんです。という風になる。
とはいえ、いずれにしても、“運も実力のうち”とは結果論に近い。
逆に言うと、運がない人は実力もないという風になると、人生はつまらない。
こんなことをあれこれ、考えている日々に、冒頭の本に出合ったのである。
実は、まだ、読んでいない。時間がないのと、たまたまの巡り合わせで読んでいない。
だから、そろそろ読もうとは思っているが、タイトルだけで感じる私なりの考察を書いておこうと思う。
実力も運のうち。
というのは実は奥が深そうだし、示唆が沢山ありそうだ。そもそも、わざわざ本のタイトルにつけるぐらいだから、よっぽど著者の実体験や調査、そしてオリジナルな考えが詰まっているのだろうと期待は膨らむ。
では、実力とは何かである。
仕事で言えば、仕事力、あるいは、仕事を任せたときに素晴らしい結果を出せる人が持つ能力だろうか。これまた、スポーツなどは分かり易い。どれだけ人気があるプロ野球選手でも、試合で結果がないと、実力がないとみなされる。実際は人気があって突進した実力がないプロスポーツ選手もそれなりにいる。
仕事の世界ではどうだろうか?
スポーツほど分かり易くはないので、客観的に実力を測ることは難しい。また、その実力は属する会社だけで通用するのか、どこの会社に行っても通用するのかでは相当違う。
スポーツと同じように同じ土俵で比べるのはなかなか難しい。
だから、仕事でいう実力とは、結構曖昧であったり不公平であったりする。これをスポーツに当てはめてみる。流石に超一流の選手に対して、“実力も運のうち”というのは当てはまらない。天性の才能があったとしても、やはり、並大抵ではない努力のたまものだろう。
それがビジネスの世界では、いま実力があるように見えても、運が良かっただけの人が多いという解釈が妥当だと思う。それは同時に、実力があると言われている人と接する際に、たまたま、りっぱな会社に属しているから実力があるだけで、そこを離れたらただの人。こんな実情にもマッチしているようにも思う。
以上