[本文引用]
「知的好奇心の塊ですよね。近藤さんは」
10年近く前、この知人の依頼で、新興国のビジネスについて講演した時のことである。知人にこんなふうに言われたのが、いまだに脳裏に焼きついている。なぜかと言うと、知的好奇心という言葉がとても気に入っているからだ。
それまでは、あまり意識した言葉ではなかった。ビジネスの世界では、ジョハリの窓は良く使われる。私も社員教育や企業支援の現場で使ってきた。これに照らしても、その知人からは、私が知らない他人に分かる私を教えていただいたように思う。
私は子供の頃から、好奇心は強いほうだ。それはますますエスカレートしている。
特に、70歳以上のシニアの経営者との付き合いがそれを加速させる。
70歳半ばでも80歳を超えていても、昭和の時代の創業社長の方々は、お会いする度に、新しい事業の構想や社会貢献の話が無尽蔵のように湧き出てくる。流石の私もお時間をくださいと返事をしてしまうほど、好奇心の塊の方々だ。
こういう方たちの日々の交流も、私だけでなく周囲のメンバーも刺激を受ける。
その好奇心以上に、私が今こだわっているのが「知的」という表現やこの意味することへの探求心だ。知るか知らないかで大違いという表現も好んで使っている。
これだけ世の中に情報があふれだすと、自分の生活や仕事に有益な情報を把握し収集し活用することは不可能にすら思えてくる。
私が情報共有や活用について、専門の仕事として取り組んで20年は越えた。今では、仕事を越えた領域、つまり、一般の生活者にとっても情報活用にも関心が強い。
好奇心が強い人は特に情報に対するセンサーが敏感だ。これを私は情報感度と意味付けてきた。
こんな私が情報に関心を持ち、深くかかわりを持ってきたことは必然のように思っている。
知的好奇心を意識し始めてしばらくして、知的健康生活という言葉を知った。これは、澤登信子さんが提唱されている考えである。
株式会社ライフカルチャーセンターの代表取締役の澤登さんは、ソーシャル・マーケティング、 ビジネス・プロデューサーとして、 生活者の視点で企業、行政との関わり方をプロデュースしている。 女性活躍を推進する第一人者であり、40年以上に渡り、女性のネットワーク創り、女性活躍の場の創造に注力し、ソーシャル・マーケティング、女性活躍に関する著書も多数発刊している。
澤登さんは、知的健康生活を次のように定義されている。
かしこく、活き生きと、健康寿命を伸ばしていくための暮らし方
世にあふれる情報の中から自分にとって本当に必要で正しいものだけを選択し、無理のない範囲で<自分のため><家族や仲間のため><地域のため><社会のため>を実践していく生活
そして、2年前、私はこれをヒントに知的健全生活という言い方を思いついた。これをビジネスの世界で言えば、知的健全経営になる。
これからの時代は、ビジネスにおいても生活においても、健全が何よりも重要なキーワードになると考えている。
しかしこの実現には山積する課題がある。個人として組織として社会として複雑に絡み合った課題を一歩ずつ克服していかないといけない。DXもやり方を間違わなければ、改革の一助にはなるだろう。DXの進展はハイスピード、だが、人間の進歩はそういう訳にはいかない。やはり、一歩一歩である。
以上