[本文引用]
ビジネスの世界に身を置いている私として、シニアを対象としたビジネスのあり方にはとても関心がある。
日本は、少子化高齢化が進んでいる。それと連動して国内のマーケットは縮んでいく。一般的に、企業がどう考えるかと言うと、2つある。
一つが限られた顧客の奪い合い、もう一つが新マーケットの開拓である。
前者は、日本はもう30年近く激しい競争の中にある。スマホ市場しかり、コンビニ市場しかり、とにかく小さくなるマーケットで顧客の奪い合いが、激化する。
適正な競争が顧客へのサービスや品質の向上につながる域はとっくに超えていて、行き過ぎの感がある。これがDXブームの中でますます加速しそうだ。
後者は、海外のマーケットである。
とりわけ、伸び盛りの新興国は有望な未来の市場である。農産物も相当量、海外に輸出するようになった。相手国が望むのであれば、自然の姿である。
そして、もう一つ、国内にも未知のマーケットがある。それがシニアマーケットである。少なくともあと30年ほどは、大きなマーケットである。ピークとしては、2040年ぐらいと予想されているが、シニアマーケットのボリュームは拡大していく。
そんな中、数年ほど前から、シニアマーケットへ参入を模索する企業も増えてきた。とはいえ、今までの一般の生活者中心のマーケットでないことは、皆さん分かっている。
ここで、企業がマーケツテイングを考える視点で、シニアマーケットを考察してみる。
一つは、LTVという考え方であるが、生涯顧客化を目指すときに使う指標である。
これをシニアに当てはめると、長寿化の中、シニアのLTVも伸びたとは言えるが、基本的に短い。だから、今までの一般顧客に関わる発想では通用しない部分がある。
また、生産年齢人口をターゲットにするのであれば、自分で稼いで消費と言うサイクルが成り立つので、購買意欲も高い。一方、70歳になって働くシニアも増えてはきたが、まだまだ少数派で、今までの貯えと年金で暮らしている中から、幾ら消費に回せるかである。
やはり、人生が長くなった分、できるだけ先の心配をして貯えが必要だ。亡くなっても結構なお金を残していくシニアも多いと聞く。
これは不安を解消するためには自然の姿だ。こんな風にシニアの実情に照らしていくと、余計な消費でお金を無駄遣いしないようにする必要がある。ところが、今の世の中で成り立っているビジネスの仕組みは冒頭で書いたように、どれだけ余計なものを買わせるかの仕組みが沢山存在する。
特に、ITの世界が広がれば、知らず知らずのうちに、シニアが食い物にされる可能性は大だ。
実際に、オレオレ詐欺も巧妙に手口を変えていて、未だに多くのシニアの方が被害に遭っている。
そういう意味では、シニアマーケットがこれから有望と言うのは、こういう不健全なビジネスをする人たちの被害者にならないようなセーフティネットになる仕組みや相談相手がしっかり必要となる。
こういうことを考える中で、無節操に国内の唯一な未開拓のマーケットとしてシニアマーケットを見ることは、とても大きなリスクを孕んでいると言える。今までの民間企業のあり方だけに委ねるととてもノスクが高い。
だからこそ、国や行政の役割は大きい。そういう意味で期待できるのは、シニア自身が考えるシニアマーケットでのビジネスがある。シニアの方の要望や欲しいものは、シニアが一番よく知っている。そういうキーマンがシニアマーケットを開拓するのが望ましいのである。
以上