[本文引用]
残暑が厳しいとある土曜日の午後。
私は、ある映画の撮影現場にいた。具体的なことは言えないが、知り合いの映画監督に見学に来ないかと言われたのがきっかけだ。
実は、自社の仕事で映画を作ったことがある。
“クジラの島の忘れもの”という、沖縄とベトナムのダナン、ホーチミンを舞台にした映画だ。
簡単にストーリーを書くと、時は10数年前。主人公は、日本に夢の実現のために研修生として沖縄で住むことになった、ベトナム人青年。その彼と日本人女性の恋愛物語だ。
ベトナム人青年のモデルは、実は、20年以上前に、ブレインワークスにIT研修生として、神戸に1年住んでいた実在の人物である。
こんな映画を、沖縄、ダナン、ホーチミンで撮影して、4年前に日本で劇場公開した。
立場上、この時に映画の撮影現場に参加することは可能だった。特にホーチミンでは、自社で運営する日本食レストランでの撮影では、エキストラとして店のお客さん約ででも・・・。
よくあるこんな冗談も言っていた。
残念ながら私のインド出張と重なり、それはかなわなかった。
そんな訳で、私は、会社で映画を作ったことはあるが、撮影現場の体験がなかった。
私が以前から知っている限りの知識では、映画は様々な撮影を根気よく丹念にこなし、それを編集する。正確にはしらないが、映画の上で数分のシーンも、撮影には、1日がかりということもあるだろうという感覚はあった。
実際、今回、撮影の現場には1時間半ぐらいしかいれなかったが、感覚的な体験としては、異次元であった。まずは、撮影のための場所の下見、リハーサル、そして本番。撮影に関するスタッフが20名ぐらいはいたと思う。
目の前で行われる本番の撮影。これがどんな映画のシーンになるのかを想像するだけで、ワクワク感が募る。
話は変わるが、映画創りと本創りは、違うものではあるが、似ている感覚もある。
私は、たまたま、20年近く本創りに深くかかわってきたので、本を構想してからのところから、試行錯誤、場合によっては七転八倒しながら本が完成していく過程が好きだ。
そして、出来上がった時の爽快感は格別だ。
映画創りは本創りに比べると、予算規模が格段に違う。本の場合の予算は、百万円単位だが、映画の場合は、少なくとも数千万円、億単位の映画も沢山ある。
だから、仕事の複雑さ、労力、コスト、撮影の現場の深み・・こんなことを考える映画が圧倒的に難解のように思う。
とはいえ、クリエイティブな仕事の現場の共通事項がある。試行錯誤、創意工夫はいうまでもないが、白紙のキャンバスに絵を描くようものだと思うが、本当に想像力の賜物なのだろうと思う。
想像して創造する。という感覚だろうか。
今回、見学させてもらったのは、たまたま、スケジュールが合致したことで、巡り合った撮影現場である。
他のシーンを見ていたら、感想、印象の違いもあったかもしれないが、きっと、どのシーンの撮影についても、同じなのではないかと思う。
チームで多くの人が、一つのシーンを撮影する。こういう臨場感は、映画ならではなのだと思う。
また、映画創りに関わる機会が訪れた時は、今回の見学の感覚を活かしていきたいと思う。
以上