[本文引用]
リスク察知力。
私が、企業支援の現場の中で、常に使ってきた言葉である。意味は、そのままの通りで、リスクを察知スキルである。
これを理解するためには、まずは、リスクという考え方を知らないといけない。
当社では、リスクはのように定義している。
”リスク”とは、「悪い出来事」そのものや
「悪い出来事」につながる可能性のある物事、
そして悪い出来事から出てきた「悪い結果」
を指して言う言葉だ。
もちろん、「悪い出事」とは多種多様である。
戦争や天災から、うっかりミスまで、
悪い出来事には際限が無い。
仕事は難易度、重要度、規模、影響範囲などとても多様であるが、基本的には、計画通り、想定通り、段取り通りにこなしていくのが理想だ。ところが、現実は、そんなに甘くはなく、やはり、悪い結果につながることもあれば、トラブルが発生することもある。
プロジェクトであれば、納期遅延、品質劣化、コスト増と言った問題が生じる。
実際に発生してしまえば、その時点では、危機状態(クライシスという横文字があてられることが多い)であり、いかに迅速に対策するかが重要である。だからこそ、こういう危機状態に陥らないように、リスクを回避するか低減するかなどを実施しないといけない。
しかしながら、リスクに気づけなければ、事前の対策をしようにも手の打ちようがない。
だからこそ、リスク察知力というのが必要な訳だ。一般的には、仕事ができる人は、このリスク察知力は高い。平均的な人よりも、リスクを発見することができるわけだ。
あの有名なヒヤリハットという考え方があるが、リスク察知力は、もっと、根底からの仕事力である。つまり、ヒヤリハットが存在しなくても、過去の経験則や仕事の環境に照らして、起こりえるかもしれないリスクを把握しておくことである。経営者は言うまでもないが、プロジェクトマネージャーにも必要だし、組織の責任者には欠かせないスキルである。
ある意味、転ばぬ先の杖ということになる。
一般的には、組織には、2:8の法則が当てはまる。2:6:2の法則もこれに近いが、簡単に言うと、人が集まると、上位20%の人は優秀だという解釈で良い。パレートの法則を説明すると、20%が全体の80%の成果を出すと言う意味でもあるが、ここでは、どんな人が集まっても、その集まりの上位20%がその組織で仕事ができる部類になる。
このクラスはリスク察知力が高いことが求められる時代である。
では、リスク察知力はどうやって、鍛えたらよいのだろうかということになるが、やはり、失敗を経験して痛い目に合って、体で覚えることが重要だ。ただ、人間はのど元過ぎれば熱さ忘れるのが本能的な性質だ。だから、同じ痛い目に合っても、それを忘れていくことが大半なのである。
では、一度痛い目に合うと、二度とそうならないようにできる人との違いは何だろうか?それはやはり、どんな仕事でも共通する責任感やプロ意識ということになると思う。
繰り返す人と言うのは、怠惰であるとか、ミスをしやすい人という印象があるが、総じて、仕事の責任意識が低いし、プロ意識が低いと言える。
では、こういう人たちをどうやって、少しでも仕事ができる人にしていくのかであるが、何年たっても、組織運営の課題は無くならないということが証明しているように、とても難解な問題である。しかし、期待できる変化はある。
それが、IT活用だ。ITを上手に仕事の中に忍び込ませることができるならば、仕組みとしてのリスク察知力の向上は期待できると私は考えている。
それには、予兆をデータ化する仕組みと、AIなどで判断する機能が必要である。
以上