[本文引用]
情報の鮮度。
私は、これにこだわって会社経営をしてきた。
それと連動して、自身の人生における羅針盤の精度の源としても、情報の鮮度にこだわっている。
鮮度というのは、私たちが日常食する野菜や魚に例えれば、分かり易い。今は、冷凍、冷蔵技術が劇的に進化を遂げ、何日でも魚などの鮮度を保つことができるが、一昔前は、鮮度と言えば、獲れたてだけだった。
だから、漁師さんが一番おいしいものを食べることができ、その格別の味を知っている。野菜なども鮮度は生活者の関心の中心だ。魚ほどではないにしても、朝採りの野菜は、新鮮感が漂う。
情報に置き換えると、この鮮度の意味が少し変わってくる。
情報を単純化すると、どこかに発生源や発生原因がある。分かり易くするために、事故や災害の情報で考える。
発生する前は、基本的には情報としてもゼロだ。それが発生した瞬間、とてつもなくインパクトのある情報として、メディアなどを通じで拡がる。ニュースで言うところの速報だ。
こういうところには、大抵の人間は強く反応する。情報の発生の瞬間を共有する感覚だ。この状態は鮮度が高いと言える。
また、メジャーリーガーの大谷選手がMVPを取った。こういうニュースが流れたとする。昨年がそうだったが、新聞で言えば、号外がでるような情報だ。発生時点に知るととても嬉しい。これまた、鮮度が情報の質を高めたと言える。
ビジネスに置き換えると、このような単純ではないが、経営者としては、悪い情報は最速で知りたい。これは、経営者の常識だ。理由は簡単で、危機管理を迅速にしないといけないからだ。
数時間後に、重大な事故やトラブルの情報が、組織のトップに伝わるようでは、組織力が低下していると言わざるを得ない。
しかし、日常のニュースでは、日常茶飯事に、重大事故などの現場の情報がしかるべき責任者に伝わるのが遅延する問題が流れる。鮮度が落ちている訳である。
情報の鮮度は、ポジティブな経営を実行するときに、更に重要になる。
情報を制するものはビジネスを制すると言われて久しい。これは、昔よりも今の方が、リアリィを増している。
情報過多の時代は、そもそも、自社にとって必要な情報の選別がどんどん困難になる。経営者としても、自社の必要な情報が鮮度よく入手できることに越したことはない。1日遅れ位の遅延は、攻めるための情報としては、大きな影響はない。
しかし、うかうかしていると、1か月、数か月遅れて、有益な情報に気づくことがある。
どういう時に起こりやすいかと言うと、それは通常のメディア依存が過ぎる時だ。
例えば、ベトナムビジネスに関するニュース。今、ベトナムはかつてないほど、世界から注目されている。サイズが、30年ほど前の日本と類似している。人口のポテンシャルも高い。かつての中国ほどのスケールではないが、日本の近くの国の中では、群を抜いて可能性がある。
こういうことがある程度見えてきた今、メジャーな新聞がベトナムにフォーカスし始める。そして、いままで関心がなかった人たちが、そのニュースを見て驚く。
しかし、そのニュースは、ベトナムに精通している人の間では、半年前、1年前の情報だったりする。もちろん、現地の発生源に近いところからの情報であれば、もっと、信憑性は高いし、新鮮である。
情報が発生したばかりだから、新鮮だというとらえ方と、自分が初めて情報に触れて新鮮だと二種類が混在しやすい。これからの経営者は、世間で入手できる情報の発生源とその発生時期に、意識を高める必要がある時代になっていると言える。
以上