[本文引用]
性善説、性悪説は、日常会話でも馴染みがある。
性善説は、人間は、もともと良い人だという考えで、日本人はお人よしが多いという言葉とも通ずる。
流石に、人間関係を性悪説中心で考えている人は少ないと思うが、引用は割愛するが、ウィキペディアで調べてみても、結構奥が深い。
では、性弱説を聞いたことがあるだろうか?
あるいは、性弱説に則って、ビジネス活動や生活をしている人がいるだろうか?
実は、知る人ぞ知る。この性弱説は、メジャーにはなっていないが、企業経営における組織マネシメントやリスクマネジメントの現場で、取り入れるところも増えつつある。
私が運営するブレインワークスでは、特に、リスクマネジメントや情報セキュリティ対策の支援を長年手掛けているが、その際には、性善説と性悪説だけで人、組織をマネジメントすることは、難しく、性弱説という人間本来の特性をベースに考えることが大切であると説いてきた。
過去の出版物にも、何度も明示している。
では、改めてこの性弱説とはどういうことかである。
読んで字のごとく、人間は全か悪かの前に、存在としても能力的にも弱さがある。
リスクマネジメントの観点で考えると、人間は、完全ではない。
最近、AIが登場して、人間対AIで競わせようとする論調が多いが、それはともかく、AIもベースはIT。言い換えれば、機械。そうした場合、人間と機械ではどちらが、正確に処理をするかと言えば、故障を除けば、明らかに機械である。
つまり、人間にはムラがあるし、ミスもある。もちろん、ミスの原因は沢山あるが、どんなに真面目で優秀だったとしても、これまた有名なヒューマンエラーというものがある。人間の特性によって引き起こされるミスである。
飛行機の世界でも起こりうることである。
人間は完全ではない。弱いと言えるのである。だからこそ、どうやってヒューマンエラーを防ぐかが重要になる。善とか悪では、対策できない部分である。
また、身近なところで考えると、特に仕事の現場で求められることの一つが、習慣化と仕事のチェックである。まずは、習慣化で考えると、こちらも性弱説がすっきりする。人間は、基本的に習慣化が苦手である。悪い習慣は知らず知らずに身につくが、良い習慣と言うのは、なかなか、身につかない。健康管理にしても整理整頓にしても。
なぜかと言うと、習慣化は結構骨が折れるし、継続するとなると努力も必要である。これも善か悪ではない。性弱説である。
次に、チェックを考える。有名なPDCAのCで考えると分かり易い。個人でも組織でも、PDCAサイクルのCが出来なくて、PDCAが崩れていく。チェックするスキルという部分もあるが、人間はこのチェックが苦手である。セルフチェックもなかなか出来ないし、まして、他人の事をチェックすることに対して、気が引ける人も世の中には多い。このあたりも、性弱説である。
もちろん、なんでもかんでもを性弱で考えようということではない。世の中には、善い行いをする善と、悪いことをする悪はもちろんある。しかし、組織の運営などを考えた場合、この二軸だけだと、どうしても犯人捜し感やレッテル貼りにつながる。
より一歩進んだ考え方が、性弱説である。
何かと、コンブライアンスの遵守や社会問題など、これからますます、個人にしても組織にして、厳しい環境が予測される。
だからこそ、性弱説をベースに、私たちの人間の弱点をどうやって、カバーするか?
ITや最先端テクノロジーの恩恵にも期待したいが、それよりも先に人間同士がお互いを性弱説でフォローし合うことが最も大切であると考える。
以上