[本文引用]
私が創業した頃、こういう話がまことしやかに言われていた。
ビジネスの情報は東京に埋蔵されている。
このど真ん中にいないと、価値のある情報は見つけることが難しい。その頃も、情報を制する者はビジネスを制する。と当たり前に言われていた。
今は、当時と比べたら、その100倍、いや1000倍、情報が増えたこともあるが、決定的に情報がビジネスを左右するようになった。しかも、これは、ビジネスだけではない。世の中全体が情報社会に突き進んでいる。
私は、これを真・情報化時代の幕開けと呼んでいる。この前、このタイトルの本も発刊した。
生活者にしても学者にしても、新興国の人達にしても、意味のある、価値のある情報に飢えている。情報量は増えたが、本当に質の高い有益な情報に出会えたり、見つけたりすることのハードルは日増しに高くなっている。
こんな時代に、東京と言う場所の価値はどうなっているだろうか?
東京に情報が蓄積されてきたのは紛れもない事実である。大企業や官公庁などがあり、経済や国政の中心機能が集積しているのだから、重要な情報が集まってくるのは容易に想像できる。
そして、全国から、東京に働きに来る。また、地方の企業も東京進出を最大の命題にする。こういう私も、20数年前、東京で勝負しようと、支店を出した。以来、当社のビジネス活動の中心は東京だった。顧客も大企業や官公庁などとの取引が基盤にもある。そういう意味では、当社も東京の環境で企業経営の基盤を作って来た。
一方で、時代は一気に変わりつつある。日本の地方であっても、新興国であっても、つながりがどんどん進展している。ITのインフラが充実してきたことが大きい。東京にいなくても、世界中、日本の地方のどこからの情報でも手に入る。ますます、この状態は加速する。
そうすると、単に情報を東京で手に入れようとしたことの意味や価値は薄れているのが実情だ。私は、コロナ禍が始まって以来、約3年、もともとの創業の場所を拠点として活動している。そうすることで、見えてきたことは幾らでもある。
そもそもそ、新興国のベトナムやルワンダなどの情報は、東京でも神戸でも関係がない。また、今、日本の地方再生、地方活性化がどんどん注目されているが、こういうテーマにしても、現地に行かないとつかめない情報以外は、東京でもどこでも同じである。
簡単に言えば、経済発展中心の活動の中での、情報の集積地としての東京は価値があったし、本当に東京で活動しないとつかめない情報も多かった。特に、いけているビジネスパーソンが東京に集積しているのだから、なおさらだ。
だが、今や、経済発展だけを目指す時代は終わった。今まで生み出してきた様々な問題や課題の解決を優先しないといけない。
そうすると、そういう現場は、東京ではないのである。これから必要な情報は、地方や新興国の現場であることは疑う余地はない。
こうなってくると、現場に入って、生の情報を掴むか、オンラインやネットで情報を掴むかの選択肢になる。
私も、もちろん、今でも東京で活動している。ただ、以前より頻度は落ちた。これからは、経済の中心地としての東京と言うよりも、経済メカニズムが変革を迫られている中で、もしかしたら、一番、変化できない場所になるかもしれない東京を、現地の人との直接の交流の中から、ウオッチングして把握しておこうと思っている。
そう考えると、これからの東京は、日本の地方や新興国とあまり変わらない場所に思えてくるのである。
以上