[本文引用]
リスクが、かつてないほど、増大している社会である?
これは真実だろうか?そもそも、どの時期と比較してということもある。
仮に日本の戦争時代と比べるなら、全く比較にならないぐらい、現代のリスクは少ない。
私達のように、戦争の実体験がないものでも、世界での今の戦争のニュースを聞いていたら、実感できる。
もちろん、実体験とは格段にギャップがあるのは間違いない。
企業活動の観点で言っても戦後の復興期の状況は想像を絶する経営環境であると言える。何もない所から、企業が沢山生まれてくる。こんな状況は、日本では2度と起こりようがない。
今、リスクが高まっているのは事実だと思うが、それは僅か30年ほど前の状況に比べての事だと思う。
バブルが崩壊し、それ以前のような右肩上がりの順風満帆な経済の発展期は終わった。そして、人口減少と言う企業経営にとっては、顧客の絶対数の減少と言う大変化が進行している。
もちろん、世界を見渡せば、爆発的に人口が増えている国もあり、この部分だけ切り出せば、いわゆる人口ボーナス期がこれから始まる、魅力的で有望な潜在マーケットを抱える国も沢山ある。
2050年辺りまでの世界の経済状況の予測では、日本の地盤沈下は止まらない。
会宝産業株式会社の近藤典彦会長が提唱されている“下山の経営の時代”なのである。
便宜上バブル崩壊までを登山の経営と呼ぶとして、それ以降は下山が必要な時代になっているのである。
ところが、人間と言うのは、そんなに簡単には切り替わらない。仮に個別の先見性のある経営者がそのことに察知し行動を変えたとしても、今までの流れや方向性は急には変わらない。
その変われない状態がすでに30年続いている訳である。登山には、未知のものに対するリスク、やったことのないリスクというのが付いて回ると思う。
そして、人によっては、頂上は永遠の先にあるように活動する。それが今は、頂上はすでに到達した。それも振り返って気づく事である。
これからは、下山が必要ではあるけれども、ここ数十年の経営者は、下山の経験がない。だから、不安にもなる、やり方も分からない。
まして、人口が減少しマーケットが縮小し、経済規模が縮小する訳である。
単純に言えば、競争社会とは言え、企業それぞれが縮小しても不思議ではないのである。
こういう時期に、世界同時にITが劇的に浸透し始めている。日本のかつてのような、マーケットが拡大する国も、日本のようにマーケットが縮小する国も、ITで世界中がつながる。こういう経営環境の中での企業経営のかじ取りは、全く未知の世界と言える。
未知の新種リスクも増大するはずである。
登山の経営では、極端な話し、頂上だけ見ていればよかった。降りることは考えていなかったのだから。
ところが、下山になると、今、山の上にいるとして、あらゆるものが見渡せる。ITで世界の状況がその気になれば手に取るようにわかる。見え過ぎて不安になる時代だ。
ITが進展すると言う事は、見える化の恩恵を享受できると部分も多い。一方で、見えすぎて不安になることも増える。知らないから出来た状態から、知り過ぎたために行動が制約される。
チャレンジ力が萎える。
リスクマネジメントは本来、攻めと守りをバランスよくするものである。だからこそ、守り過ぎないリスクマネドメントが必要な時代なのである。
以上