[本文引用]
EUCを知っている人はどれだけいるだろうか?
今どきは、ネット検索でたいてい調べることはできる。20年ほど前には、IT業界では流行言葉だった。
EUCは、EndUserComputingの略である。一般的に、ITの世界でソフトウェアを作る仕事は、専門家の仕事である。それを、専門家でなくても簡易的なソフトウェアを作って仕事をしましょう。という考えである。
代表的なものに表計算ソフトや簡易型データーベースがある。それより以前は、このような専門家ではなくても使いこなせるツールがなかった。ソフトウェアを作るのにOS(基幹のソフトウェア、オペレーティングシステム)やプログラミング言語に精通するしかなかった。
やがて、表計算であれば、マクロ機能を使って、処理の自動化が一部出来るようになった。
そして簡易データーベースはカード型のデータのデータ管理が容易にできるようになった。名刺管理を考えると分かり易い。
IT活用の現場で一気にEUCは拡がった。
メリットも当然沢山あるが、デメリットも沢山発生した。
私は、20年ほど前に、日経BP社が運営するWebマガジン“SmallBiz”に“散在するEXCELのシートの弊害”とういうコラムを掲載した。3年間で約80件投稿したが、最大のアクセス数になった。
私の書いたことがすごいと言うより、多くのユーザーが身につまされていたのだと思っている。
今もEUCは実は死語ではない。EUCとは騒がれなくなったが、実は、IT活用の現場では、以前よりも深くEUCは浸透している。
特に、表計算ソフトが使われている。最近は、ワープロソフトにしても、色々な仕組みを作れる。ある意味、これらのソフトが登場した頃に比べると、それぞれの機能が相乗りしたところがあって、便利になっているけれども、余計に選択肢が増えて、効率よいEUCは、昔よりハードルが高くなった。
今、世間ではデジタル革命と称して、DXブームである。私達も、民間企業や自治体のIT活用支援や情報セキュリティ対策支援を本業としている中で、DX関連の仕事の依頼が急増している。
さぞ、革新的なビジネスの構築か、はたまた、全社的な業務の最適化を推進するための一気通貫のデジタル化の依頼かと思いきや・・・。
実際の多くは、EUCに関する話が多い。
考えてみたら、それだけ、昔で言うEUCは根強く進んでいたということになる。ところが、問題は昔よりも大きい。20年前と比べて、IT環境はがらと変わってしまったからだ。
例えば、クラウドサービスが全盛期だ。また、SNSを業務の中に取り組んでいるか、そこまでしなくても、仕事とプライベートの境目が曖昧な中、扱う情報やデータが一気に増えた。
以前に増して、現場裁量で、企業の運営に関わる情報やデータの活用が推奨され、現場に任されている。簡単に言うと、今心配なのは、個人最適、部分最適の増大と、情報セキュリティ対策の課題だ。
前者は、デジタル化の最大の目的は、全体最適であり、EUCが浸透すればするほど、そこから乖離が始まる。
また、後者については、誰がどんな情報を責任もって扱っているか、よっぽど、しっかりコントロールしないと、機密情報や重要情報の漏洩事故などを発生させることになってしまう。
これからの時代、EUCはどんどん進展していくが、そのための会社の仕組み作りや運用ルールを構築して、その上で、IT活用をEUに任せる事が必要である。
以上