[本文引用]
初夏の兆しを感じる今日この頃。
街を歩くとやや緊張の面持ちをした就職面接へ向かうであろう
若者に出くわす。
弊社でも先月から新卒採用の説明会が始まった。
今年は彼らに何を話そうかと考えることが私自身の脳への
リフレッシユにもつながるとても貴重な機会だ。
今年の説明会に向けて考えてみたことをここで述べたいと思う。
私が今の学生や若者に伝えたいことの基本は変わらない。
それは、会社は社会の入り口に過ぎないということだ。
10年以上前から拙著にも書いたし、セミナーなどの機会があれば、
必ずと言ってよいほどこのテーマで話をしてきた。
今でも変わらないと思うが、こと就職活動に関しては固定観念の
塊のように学生当人も親御さんや関係者も良い会社に入って
良い人生を送ることで頭を支配されている。
特に大企業志向はこの20年近くを見ても一向に崩れることはない。
必然的に就職が近づくと若者は会社巡りに奔走する。
会社の理念だとか雰囲気だとかをくまなく調べようとする。
先輩社員の話などから会社の全容を把握しようと躍起になる。
採用したい側も人事戦略と併せて巧みである。
会社をいかによく見せるかが勝負である。
だから、会社側は全容なんて学生たちに見せることはない。
考えてみてもらいたい。
このような会社訪問を繰り返しても、決して社会は見えてこない。
会社は社会の変化で変わっていくのが宿命である。
端的に言うと、不十分な要素は多々あるとしても、新聞を読んでいる
方が社会の動きはまだわかる。
今、現役で働いている人たちが自社以外の社会が見えているか、
わかっているか、と問えば、全体的には答えはノーである。
常に例外はあるが、社会の変化を現実と同じ温度で感じている人は
とても少数である。
このような現実を踏まえると、会社巡りを繰り返せば繰り返すほど、
視野が狭くなり、固定観念がますます強くなる。
「良い会社があるはずだ」
「良い会社を見つければ人生安泰だ」
こんな幻想は、とっくの昔から存在しないのである。
今、世間では高齢化問題が喧しい。
そして、この高齢化問題を真剣に考えると、どうも先行き不安にも
なるし、気分が落ち込むのが今の論調だ。
関係する人々が頭を抱えている姿が容易に想像できる。
そんな中、光明はいくつかある。
ここで名著を紹介したい。
「LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略~」(東洋経済新報社)
である。
興味のある方は是非読んでみてほしいが、
私はこの本に昨年末に出会ってからはあらゆる機会で話題にし、
皆に勧めている。これからもそうするつもりだ。
理由は簡単。
世界規模で今起こっている事、これから起こることをベースに、
100年ライフをどう生きると良いかの示唆がふんだんに
盛り込まれている。
高齢化先進国の日本に当てはめると、これがドンピシャリ。
日本人の全世代が学びになる本なのである。
学生は会社訪問するよりも、この本を熟読したうえで社会を眺め、
考えることをぜひお勧めしたい。
今の社会がどうで、これからの社会がどうなるかが端的に
凝縮されているのである。
実際、私が運営するブレインワークスの今後の主要事業のひとつ
であるシニアビジネスにおいても気づきが多い。
日本にはお元気なシニアがこれほど存在するのか…と
驚く毎日である。