[本文引用]
当社は、9年前に『THE END OF SOFTWARE』
(2006年11月・カナリア書房)を発刊した。
ソフトウェアの時代の終焉(持つ時代から借りて利用する時代がきた)
を本書で説明した。水道の蛇口をひねると水が出てくることは
当たり前である。それと同じようにICTも借りて利用することが
当たり前になる。蛇口をひねると水が出るにもかかわらず、
手間隙かけて井戸を掘る必要はない。
本書発刊当時、業務系のシステムは開発して導入するか、
パッケージを導入、もしくは、パッケージをカスタマイズして
導入するのが主流だった。つまり、資産として保有するもの
という前提でICTは考えられていたのだ。
紛らわしいことに、バズワードはこのテーマでも多数登場した。
ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)、
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)などがそうだ。
そして最近世の中を賑わしているクラウドもそれにあたる。
どれも本質は同じで、ICTを借りて利用するという点にある。
すでに存在するさまざまなサービスをインターネットを介して
有効に活用するためのサービスだとシンプルに考えればよい(図1-3参照)。
時代の変化にいち早く着眼し隆起したのが、米国発祥の
本格的クラウドサービスベンチャー企業であった
セールスフォース・ドットコム社である。
SFA(セールス・フォース・オートメーション/
営業のプロセスや進捗状況を管理)、
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント/
顧客とのやり取りを一元管理)という略称も一般化した。
このような流れの中で、ますますソフトウェアを自前で持つ時代は終焉を
迎えていきそうだ。例えば、経理処理も法改正により、クラウド上での
会計システムが充実化しそうである。2015年にはこれまで
対象外だった3万円以上の領収書も電子データとして保管できるよう、
電子帳簿保存法の改正が見込まれている。
この法改正により、領収書をスマートフォンで撮影し電子データ化する。
さらにクラウド上の会計システムと領収書の電子データが連動される
サービスが提供され、経理業務も変わるだろう。
今は、クラウドサービスが乱立してきた状態だが、私自身は
過渡期だと考えている。クラウドサービスを利用するのであれば、
グループウェアも販売管理も、経費精算などのワークフローも
つながり、データ連携された状態をワンストップで提供された方が、
利便性が高いことはいうまでもない。
したがって、数多くあるクラウドサービスが統廃合され、
よりサービス機能が集約化される方向に進むはずだ。
また、ICTのビジネスモデル、特にクラウドサービスや
プラットフォームビジネスを提供する企業の時価総額が
高い点にも触れておきたい。世界時価総額ランキングを見ると、
1位にアップル、Google とマイクロソフトが熾烈な2位争いを
繰り広げている。日本が世界に誇る企業のトヨタ自動車でさえ、
Facebook やAmazonの後塵を拝しているのだ。それは、これらの
ビジネスを提供する企業はクラウドサービス構築や
プラットフォームサービス構築にかかる費用や
運営コストに対して収益率が極めて高い点が最大の特徴だ。
投資対効果が高いため、市場からの評価も高い。
クラウドサービスは過渡期であり、やがてワンストップサービスが
提供できるところに集約化が進むと先ほど説明した。今後10年以内に
業界再編が起きるのは間違いないだろう。
国産のクラウドサービス提供企業の勃興に期待したい。
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(近藤 昇『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第1章ICTに振りまわされ続ける経営者
-そもそも今はやりのクラウドとは何なのか より転載)