[本文引用]
これまでに説明してきたが、日本国内は市場、つまりマーケットが縮小していく。
これは一過性ではない。人口が減り続けていくのだから当然のことである。
マーケットが縮小する国の特徴として、顧客の奪いあいがあげられる。
どの企業も顧客の争奪に必死である。
限られた、しかも先行き縮小傾向の顧客の囲い込みに躍起だ。
そして、ICTを活用した顧客の奪いあいに拍車がかかる。
いくら、企業が膨大な投資で、大がかりなしくみを作ったとしても、
先細りが見えている未来のない厳しい戦いを強いられていることは間違いない。
それと、日本は便利な国である。交通機関にしても街の機能にしても
とても便利な国である。海外と比較すると、その便利さを実感するはずだ。
また、人によるサービスレベルが高い国である。
当然、顧客である私たちもそれが当たり前と思い、さらに良いサービスを
求めているのが常だ。
少子高齢化によるマーケットの縮小は深刻である。
しかし、高齢化は必ずしもすぐにマーケットの縮小に影響を与えることはない。
少なくとも、しばらくは、ある程度余裕のあるお年寄り(アクティブシニア)が
増えることは企業にとっては嬉しい話である。
これは新しいマーケット開拓という視点でいえば、
数少ない伸びていく領域ともいえる。
すでに、アクティブシニアにターゲットを絞って成長している企業はいくつもある。
そうなるとマーケット縮小の最大の課題は、
やはり、生まれる子供が減少することであろう。
特に、子供だけを相手にしたビジネスは深刻である。
働き手が減るという別の問題も深刻だ。地方はこれが顕著だ。
地方の人口が減りだしたからといって、必ずしも急激に
マーケット縮小につながることはない。
アクティブシニアが支えるし今では外国人観光客も増えてきた。
顧客は減らず、働き手の減少が先に始まるのが深刻な問題となる。
当然人手不足に陥る。ここに顧客とサービス提供する
人材の需給ギャップが生まれるわけだ。
顧客がいてもサービスする人がいない。
企業側とすれば、おもてなしも大切にしたいが、
省力化優先こそが至上命題になるのだ。
こういう環境では、ICTが省力化に貢献できる可能性がある。
ロボットの活用で労働者不足を埋められることも
技術の進化につれて生まれてくるだろう。
一方、新興国などのこれから経済成長が見込まれる国はマーケットが拡大する。
日本の昔、ちょうど1964年に開催された東京オリンピック前後が
現在の東南アジアともいえる。当社が拠点を構えるベトナムはその代表例でもある。
ベトナムはいま、ちょうど戦後40年を迎えたばかり。日本は戦後70年を経過した。
この時間軸をずらすと色々なことが重なって見えてくる。
さらに先にはミャンマーなども控えている。
潜在的なマーケットだけを見ても、東南アジアはかつての日本を
想起させるワクワクする国ばかりで期待感は膨らむ一方だ。
では、これらの国で顧客対応力強化にICTを活用することはどうか。
目的を絞れば効果的だと感じている。
顧客が増える国のICT活用はたんなる顧客の奪いあいの
ツールにするのではなく、顧客との関係性改善や、
本当の意味での顧客満足の向上に使いたい。
そういう視点を持った企業は将来的に相当優位に立てるはずだ。
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(近藤 昇『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第2章 アナログとICTの両立を考える
-マーケットが縮小する場所と拡大する場所 より転載)