[本文引用]
経営に役立つ情報とは何か?いまや経営者にとってもっとも関心が高い
テーマでもある。
経営資源は「ヒト・モノ・カネ・ジョウホウ(人・物・金・情報)」と
言われだしてどれぐらい経つだろう。私の記憶では創業した20年前ぐらいには、
すでに経営資源に「情報」は加わっていたと思う。
情報が加わった頃には、それまでの長い間、従来の「人・物・金」の
経営資源の世界で経営をしてきた人々、特に中小企業の経営者にとって、
「情報」といわれてもピンとこなかった。
実際、この「情報」は今でもなかなかわかりにくい。
当社は、『これで中小企業の情報共有化は成功する』
(2001年5月・オーエス出版)の中で、経営情報について定義している。
経営にかかわる重要な情報の具体例としては「顧客情報、営業情報、
ライバルの情報、人事情報、技術情報、クレーム情報」などがある。
特に、クレーム情報はいまや企業の存続にもかかわるぐらい
重要になってきている。これに加えて、本書のテーマでもある
「ICT活用の情報」やセキュリティに代表される「リスク情報」
などもある。いずれも、経営の最高レベルで保有している
これらの資産は外部に漏えいすることはあってはならないのである。
そして、私たちは情報共有・活用の基本的なプロセスも定義した。
それは、情報の「収集→共有→醸成→活用」の4つのステップである。
どれも大切なプロセスであるが、「収集」を効率よく進めないことには
始まらない。昨今のICT社会では、特に最初のステップ「収集」で
迷いが生じやすい。すでに述べているが、今は情報があふれている。
見方を変えれば氾濫しているともいえよう。大企業は、専門部隊を設置し、
日々、自社の経営にかかわる情報の収集を行うことは難しくない。
実際にずいぶん前からそういうしくみができている。
アンテナを360度張りめぐらし、あらゆる情報をウォッチングし、
データ分析も行い、活用を考えるわけだ。
それこそ、ICTが強力な武器になっていることだろう。
しかし、中小企業はそうはいかない。中小企業はそんな専門部隊を
設置するコストを捻出できない。そもそも、中小企業に必要な情報は、
大企業に比べて少ないこともある。極端にいえば、今までは、
社長ひとりのアンテナの感度がよければ乗り切れた。
私も長年経営者をやりながら考えてきたが、小さい会社にとっては
極端な話、年にひとつでよいから、経営を劇的に好転させる情報に
出会いたいと思っている。あれもこれも知りたくなるのは人間の性とも
いえるが、中小企業という立場で考えたときには、たったひとつでも
情報の価値はとても大きいのである。中小企業を牽引する創業系の社長は、
みな嗅覚が鋭い。この情報を収集する、言い方を変えれば発掘する能力に
長けている。私は、これを砂の山からたった一粒の砂金を見つけることに
近いと考えている。
今、世の中には情報があふれ、親切にも自動的もしくは半自動的に
情報を絞り込んで届けてくれる機能やサービスが増えてきた。
新聞をチェックしない経営者はいないと思うが、今はその気になれば、
電子で日本中の新聞のチェックも可能だ。
そのトピックスを提供するサービスもあるくらいだ。これはこれで
役に立たないとは思わないが、社長クラスの本当の力はアナログ的な能力である。
私の尊敬する先輩社長に創業時に言われたことがある。
「タナボタとよく言うけど、経営をする上では非常に大切だよ。
なぜなら、棚の下にみずから行かなければ、幸運も起こらない」
今となってはとても身に染みて理解できる。
このことを私は自分の行動のベースにしているし、社員にも
機会があるごとに教えている。
プロアクティブという言葉がある。気づいて行動するということである。
言葉にすると簡単なことであるが、実践はとても難しい。
ほとんどの人は言うだけに終わってしまう。
本当に有益でワクワクする情報は、みずからが能動的に
見つけにいって初めて出会うものだと確信している。
そして、その発信源には必ず出会うべくして出会う人が存在するのである。
情報は人から発信されるのである。だから、当社ではその情報の「きっかけ」も
重要視している。人はこのきっかけ情報をついつい疎かにしてしまう。
ICTがいくら便利になっても、きっかけという大切な情報を記録しておかなければ、
本当の成功法則を見つけることはできないのである。企業は人なりという。
社員だけのことを指すわけではない。企業にはさまざまな利害関係者もいる。
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