[本文引用]
企業の情報発信の王道といえば、長い間、テキストと写真が中心であった。
パンフレット、ホームページ、書籍、小冊子…どれをとってもその中身は
「テキスト+写真」の組み合わせが主流である。
一方で、昨今の大きな潮流として「写真+動画」という組み合わせが
大きく注目されている。
それはなぜなのか?動画については、過去からも身近な存在だ。
企業広報の現場では、動画を制作し、ステークホルダーへ
発信することはしばしば見られた。もっと言えば、テレビ放映の世界こそ、
動画活用の最たる例かもしれない。しかし、それが実現できるのは
一部の大企業に過ぎなかった。そこに、革命を起こしたのが、
誰もが簡単に使用できる動画編集ソフトウェアとYouTubeや
日本の「ニコニコ動画」を代表とする動画投稿サイトの普及であろう。
手軽に動画が使用できることはなにをもたらすか?
それは動画の強みを再認識することに他ならない。
前出のパンフレット、ホームページ、書籍、小冊子などは
テキスト中心のいわば、活字を中心とした情報発信である。
活字には活字の強みがある。それは、考え方や理念、哲学など、
いわゆるしっかりと読ませることによる訴求を狙える点である。
一方で、動画はテレビや映画を見てもらえればわかるとおり、
直感的にイメージとして訴求できるツールである。
商品、社長の顔、社員の顔、生産現場、店舗などあらゆるシーンが
映像として発信されると、それを視聴する側は瞬時にその商品、
その会社のイメージを自身の中に作りあげることができる。
だからこそ、eコマースや企業広報の現場で利用されるケースが
多いのである。
通販業界の優良企業「ジャパネットたかた」はテレビショッピングで
有名になった。商品の使用感をスタジオから社長みずからが
お茶の間の人々に訴えかける。彼らが他のテレビショッピングと
異なるのは、安心感ではないだろうか?
販売しているものは他の企業とそう大差はない。
しかし、社長自身がワンオクターブ高い声で、商品の魅力を伝える姿は、
消費者にこれ以上ないくらいの安心感を与えるのだ。
映像の強みは、瞬時に相手にイメージを作りあげることができる点だ。
優しそうな人が話をしていれば、そのように相手に伝わる。
元気そうな姿を見れば、元気そうに相手に伝わる。
まさに、リアルコミュニケーションと同様の伝播力を持つところが大きい。
一方、写真はビジュアル的な部分しか相手に伝えられない。
しかし、決定的なワンショットを美しく、
鮮やかに相手に伝えることに関して、写真の右に出るものはない。
だからこそ、映像と組み合わせることで補完関係が成立する。
つまり、映像と写真をうまく組み合わせると、より効果的な
ツールを作りあげることが可能なのだ。これを企業が利用しない手はない。
特に海外でビジネスを展開する場合、動画と写真は大きな武器に
なることは間違いない。言語の壁を越えるものは視覚的に
ピンポイントで訴えられる写真であったり、瞬時にイメージが
できやすい映像だ。通訳をとおして言葉で伝えるよりも
はるかに効果がある。相手の企業の様子やトップの顔を
直に見ることができれば、ビジネスも加速するはず。
なによりも相手にとって安心感が違う。
映像を活用したサイトであればGoogleの検索結果が
上位ランクされる可能性が高いという調査もあるという。
そんな皮相的な見方ばかりしていると、本質的な部分を
見失いがちになるが、「映像+写真」はこれからの企業の
情報発信においてスタンダードになっていくと確信する。
その際に大切なことは、写真や映像による受け取り方は
個々によってさまざまであり、誤解を与える可能性がある
ということだ。仮に、本意ではない受け取り方をされた場合、
その影響は大きい。そうならないよう、発信する側の
意図が正確に伝わるように工夫が必要だ。
その点、映像つき書籍であれば、映像(写真)と文章の
両方で正しく、相手に伝えることができる。
その効果はいうまでもなく、ご理解いただけるものと思う。
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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第5章 エスカレートする情報過多と溺れる人間
-写真と動画を生かした創造型ワーキング より転載)