[本文引用]
日本のビジネスパーソンであれば、PDCAサイクルを知っている人は
多いことと思う。企業の品質管理や生産管理などのあらゆる業務を
円滑に進めるためのマネジメント手法のひとつだ。
すでに本書でも紹介しているが、PDCAサイクルは
「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」の
4つの工程を繰り返す。そうすることで、業務を継続的に行い、
業務レベルをブラッシュアップしていく。
私は、拠点を構えるベトナムで、このPDCAサイクルを
現地の企業に対して徹底的に広めている。
高度成長期に入ったベトナムでは、日本の経営を学びたいという経営者が
実に多い。かつて、日本が戦後復興を遂げ、世界2位のGDPを誇るまでに
高度成長を実現した。その日本式経営から学びたいのだ。
そこで、私は「日本の経営から学ぶ」というテーマで10年ほど前から
セミナーを定期的に開催し、PDCAサイクルを広めてきた。
今では、ベトナムでもPDCAサイクルという言葉が定着しつつあると
実感している。
PDCAサイクルは非常に優れたマネジメント手法である。
しかし、導入したがうまく機能しない企業が非常に多い。
その原因は「計画(P)、実行(D)」のやりっ放しにある。
実行したことの「確認・評価(C)」を行わないのだ。
これでは、継続性は保たれないし、現状よりもレベルアップすることは
望めない。
そこで、私が提唱しているのが「CAPD」だ。
チェック(C)の重要性を認識し、人も組織的にもチェックを徹底するのだ。
ダイエットに例えると、感覚的にダイエットをするのではなく、
日々の体重や食事、運動量などを記録し、ときには励みとし、反省もする。
それを継続することでダイエットに成功するのと同じ要領だ。
その記録の部分はICTが得意とするところだ。
PDCAサイクルを高いレベルで維持させるためには、
そもそもチェックが大変重要であるということを社員に教え、
組織的に浸透させるというアナログ的なマネジメント力が重要だ。
その上で、ICTを活用したしくみで補強すると、
PDCAサイクルがまわしやすくなる。
例えば、会議においては、会議前にアジェンダを作成し、
参加者と会議前に共有しておく。参加者と会議の目的を共有しておけば、
効率よくレベルの高い会議が行える。会議後には、議事録を作成し、
その内容を関係者と共有しておけば、決定事項のチェックもでき
る。こういったことは、グループウェアのクラウドサービスを利用すれば、
簡単に行える。
クレーム対策においても、クレームの発生日、クレーム内容、関係部署、
対応内容などを記録しておく。そして、クレーム対応に関する事象を
関係者と共有し、再発防止に努める。
こういったことも、グループウェアで行える。
これまでに、記憶よりも記録することの重要性を説明してきた。
ICTは、このように記録することに長けたツールである。
人間が記憶する能力よりはるかに優れた能力を持つことはいうまでもない。
すべての記録にICTを活用するのである。
そうすれば、必要に応じて、レビューも行えるし、チェックもできる。
納期に関することは、リマインダー機能を使えば、忘れることなく
確実に履行できるようになる。
ICTに振りまわされるのではなく、能動的に使いこなしてもらいたい。
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(近藤 昇 著 2015年9月30日発刊
『ICTとアナログ力を駆使して中小企業を変革する』
第8章 中小のアナログ力が際立つ時代の到来
-CAPDが基本で、ICT活用で補強 より転載)