[本文引用]
ここ2~3年の間で、日本の企業は大も中も小も一斉に海外進出に向けて
動き出してきた感がある。私達は、創業時から海外でビジネス活動を
行ってきた。そして同時に、ICTサービスを企業に提供する会社として
活動を始めたので、「海外ビジネスをすること=ICTを上手に使うこと」
にはどこよりも先んじて、自然体で取り組んできたと思う。
進出当時のことを思い起こせば、中国でも韓国でも台湾でも
現地の経営者は、いきなりアナログ的だった。日本の国内だけで
ビジネスしている経営者は、日本人がアジア各国の中では一番ウェットだと
思っている。だが、私はそうは思わない。
日本人も確かに「ノミニケーション」や「ゴルフ」などでの
信頼関係の構築は重要視する。しかし、アジアの経営者はそれ以上だ。
私が、韓国のベンチャー企業と日本の企業の橋渡しをしていた
2000年頃、韓国では、日本より先行してブロードバンド化が
進行していた。ソウルに乗り込んでいきなりド肝を抜かれたことを
今でも鮮明に覚えている。彼らが得意とする「風呂敷を広げた話」
ではない。オンラインセミナー配信の合弁会社設立の話をしていた
時である。打ち合わせで何を話そうかと思案していると、
挨拶程度で打ち合わせは終わり、「今日はまずは飲もう」と言う。
結局、三次会までご丁寧にセッティングいただいた。
十分すぎるほど打ち解けた翌朝、これで商談もまとまったと
勝手に安心していると、予想外な展開となった。
この時の打ち合わせは、前日とはうってかわってとてもタフな
交渉の場となったのである。その頃の韓国は、ネットベンチャーは
日本よりかなり進んでいた時期で彼らは自信満々だった。
強気なのはわかるが、昨日のフレンドリーな雰囲気はいったい
どこへいったのか・・・と呆気にとられてしまった。
そんな経験をしたあの頃から十数年が経過した。
今は、ベトナムを中心に東南アジアを見据えて、
建設や農業ビジネスなども推進している。実は、ベトナムも韓国に
負けず劣らず「ノミニケーション」を大事にする。
アジアでいかにビジネスを推進するか?
長年考え続けてきたことだが、私達が創業時から支援サービスを
提供しているのは中小企業だ。やはり、アナログ的で
ウェットな会社が多い。経営者も叩き上げで人間味あふれる方が多い。
そんな中小企業も今は、海外を視野にするべき時代に入った。
いや、視野にできる時代が来たといえよう。大企業のように資金力も
ないし、人もない。とても中小企業では太刀打ちできないと
思われている。ボスである社長自らが出張っていけば良いが、
そんな余裕もない。ボヤきと諦めのオンパレードだ。ただそれでも、
パワフルな社長も少なからず存在する。60歳を超えても、馬力があって、
しかもその国が好きで何度も足を運んでいる社長もいる。
すでにアグレッシブに活動している社長も、尻込みしている社長も、
こんなチャンスの時代になんともったいないと思う。
それはICTを使えていないからだ。日本は、アジアを中心、
例えば、ベトナムかタイあたりを中心に地図を見ていただいたら、
とても辺境の場所にある。近いということは親近感だけではなく、
実際に商圏も一体化するし、物流も生まれるし、ビジネスの
シナジーが生まれやすい。日本はとても不利な場所にあるのである。
私達の場合、海外活動を始めた時から、こういうハンディを
そこまで感じたことはない。飛行機に乗っての移動は面倒に思うのは
正直なところだ。しかし、日々の業務は、海外にいることを意識せず、
日本国内との重要会議や営業活動も普段どおり行われている。
言うまでもなく、ICTを自然に、上手に活用してきたからだ。
具体的には、メールの活用やテレビ会議の活用である。
そして、ベースには情報共有化・活用化のための仕組みづくりに
注力してきた。海外の相手ともオンライン上で打ち合わせを行う。
その議事録は日本の担当者が作成し、すぐに私の手元に送られてくる。
今では、昔と比べれば安価で安心なクラウドサービスが数多く
登場している。ますます、快適になる一方である。
こんなこと書くと、中小企業の社長から怒られそうだ。
「バカを言うな。直接会って、仲良くならないでどうやって
ビジネスが上手くいくんだ」もちろん、私は今でも実践している。
直接会うときは、徹底的に飲んで遊んで、ゴルフもする。
そうすれば、一気に関係は深くなる。仕事を進めるのは、
遠隔地での会議やメールで充分こなせる。要は使い分けと、
メリハリなのだ。今の日本企業は一番中途半端なやり方をしている。
このままではICT活用時代に取り残されていくのではないかと
心配になるばかりだ。
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(近藤 昇 著 2016年10月15日発刊
『もし、自分の会社の社長がAIだったら?』
PARTⅡ 企業経営への提言
-【提言12】海外ビジネスを円滑に行うためのICT活用のコツ より転載)