[本文引用]
2016年7月上旬、ICT関連企業の友人とカントーを訪れた。
カントーはベトナム南部に位置するメコンデルタの中心都市であり、
人口は約120万人。(※2016年発刊当時)
メコン川に隣接するカントー市はホーチミンから南西約160キロに位置する。
チベット高原を源流とするメコン川は、中国雲南省を経て、
ベトナムでは9つにわかれ、それゆえ九龍川(クーロン川)とも呼ばれている。
カントーはその最大の支流であるハウザン川の南西岸にある。
ハウザン川は農村部と都市部を結ぶ水運の中心となっており、
人々は水上マーケットで暮らしの生計を立てている。
この水上マーケットの風景は見る者に「生きることとは何か?」
を改めて教えさせてくれる。
カントーは日本人にとっては知られざる地方都市であるが、
私達は縁があって、支店を開設している。
VCCIカントー(カントー商工会議所)の日本側のカウンターパートを担い、
日越経済文化交流促進のサポートもしている。その一環で、2015年11月に
第1回となる「日越文化・経済交流フェスティバルinカントー」を開催した。
私達が実行委員にとなり、ビジネスマッチングやステージイベントの企画を担当する。
2016年以降も年中行事として開催していくことが決定している。
私が、初めてカントーに訪れたのは今から約6年前のことになる。
仲の良いベトナム人の友人に誘われて、カントーに初めて行った時の印象は
今でも鮮明に記憶に残っている。まだ、ホーチミンから中継都市である
ミトーまでのハイウェイもなかった頃である。車で4時間以上はかかった。
カントーに入る寸前に、突如として巨大なカントー橋が目に飛び込んできた。
日本のODAで建設した橋だが、日本の土木技術の粋を結集して建設した
橋の雄姿に感動した。日本人にとって、このような建造物は貢献が実感でき、
特に感慨深い。メコン川に架かるこの巨大な橋を超えるとカントーに入る。
カントーは近隣でいえば、隣国カンボジアの首都プノンペンと
雰囲気が似ている。2つの都市ともにメコン川に隣接しているし、
生活様式がとても似ていると感じた。このあたりは国の違いよりも、
気候風土の違いの方が人の気質や生活様式に対する影響が大きい。
カンボジアとベトナムの2つの国は、遠い日本からの印象では
まったく違う国のような印象があるが、メコン川流域の都市という視点からは
よく似ているのである。人口も近い、この2つの都市を比べると
カントーの未来の姿が見えてくる。
今のカントーは10年以上前のプノンペンに似ている。
その頃のプノンペンは高層ビルがようやくひとつ、ふたつ建設が
始まったばかりだった。その後、リーマンシッョクを経て、
今やプノンペンは空前の建設ラッシュに沸いている。
建設インフラがいったん整いだすと、一気に街の風景は変わる。
一方で地元の生活自体は急激には変わらない。
しかし、大抵の人は建設物の変化で都市化を感じる。
現時点ではカントーに高層ビルの建設の気配はまだない。
しかし、今回のカントー訪問では、その胎動を感じとることができた。
都市化も着実に進むだろう。
その根拠は「ビンコムセンター」が進出し始めている動きを見たからだ。
ホーチミン、ハノイなどの大都市中心に展開している大型商業施設である
「ビンコムセンター」が2016年9月にオープンする。
私が訪問した際は急ピッチで建設が進んでいるところだった。
すでにベトナムのポピュラーなスーパーマーケットチェーン
「コープマート」などはあったが、「ビンコムセンター」が
オープンするとなると街の彩りも大きく変わり、都市化は加速するだろう。
今回の訪問の目的は、11月に開催予定の「第2回 日越文化・経済交流
フェスティバルinカントー」の打ち合わせのため。
それに併せてVCCIカントーとカントー大学、そして現地の
ICTベンチャー企業などを訪問した。
VCCIカントーでは旧交を温めつつ、いつも以上に豪華なレストランでの夕食で
歓待を受けた。「今年もたくさん日本人を呼んできて欲しい」と語る
VCCIカントーの方々は本当に日本人と日本企業のカントー入りを期待している。
「日本人や日本企業にたくさん来て欲しい」。
こんな声は、今やベトナムのあちこちの地方都市でもよく聞く。
しかし、なかなかカントーまで出向く日本人は少ない。実はビジネスの
将来性でも人材の宝庫という意味でもカントーの魅力は数多い。
その中でも特に人材の宝庫であるカントー大学は卓越している。
カントー大学はベトナムの地方大学としては最大の国立大学である。
水産、農業、工業、情報工学など13学部を擁しており、
学生数は約4万人にのぼる。2015年で開校50周年を迎えた
由緒ある大学である。キャンパスにはメコンエリアの13省からの
記念植樹が植えられており、メコンデルタを代表する大学であることを
実感する。