[本文引用]
人間だけが言葉を使うわけではないが、
ここまで高度に言葉を使う動物は人間しかいないと思う。
しかも、話するだけでなく人間は言葉を読み書きする。
そういう意味で、人間のコミュニケーションは多様であり複雑である。
とはいえ、一般的には話することを主体に意思疎通を図り人間関係を構築する。
話をすることは人間の進化にとってとても重要であるが、一方で人間を苦悩に追い込むものとも言える。
人はおおざっぱに分けると、よく話をする人かあまり話をしない人に分かれる。
あまり話をしない人が、人の話をちゃんと聞く人というわけでもない。
世の中には、人の話をちゃんと聞く人が少なからずいる。聞き上手と言われる人である。私もこちらを目指している。
ここからの話は単純化して、話する人と聞く人に分けて話を進める。
まずは、話し好きな人のことを考えてみよう。
人は特にシニアになると一般的によく話をするようになる。
しかも年齢からくるものも重なって同じ話を何度も繰り返す人もいる。
そうすると聞く側としては結構気を使うし、“その話は前に聞きました”
とは言えない人も多くストレスが溜まることになる。
昨年、80歳手前のシニアの方との初対面の会食の機会があった。
その方は、特別私に質問することもなく、2時間の食事の間、95%以上話されていた。そして、話の中身は皆さんの予想通りその方の昔の話である。
私にとっては雲の上の人でもあり、分野も違うので話自体はとても新鮮であった。
ただ、同席していたシニアの側近の方はどうであったか・・である。
きっと、毎回同じ話を聞いているのであろう、それは彼ら達の態度を見ればわかった。望むところは、仮にそうだったとしても自分のボスの話に最低うなずきが欲しい。
単純に考えると人が話をするという事は、原則として聞く人がいるということである。
この時の氏も私が聞く側だから話をされたと言える。
ビジネスプランのプレゼンなどでは顕著であるが人に自分の言いたいことや要点を端的に伝えるスキルと言うのはとても重要である。ただこのスキルがプライベートでのコミュニケーション力と結びつくとは限らない。プレゼンと違い、相手の状況に応じて柔軟に話を変えないといけない。
また、私の口癖だが人の話は3分の1しか伝わらない思っている。
1/3は誤解され、1/3は忘れられる。講演でも面会でも変わらない。
だから、面会で必要以上に一方的に話しても意味がないのである。要点だけ伝えて、あとで、しっかり資料や情報のフォローすることが重要なのである。
次は、聞く側の立場でのコミニュケーションを考えてみる。
私の経験上、人の話を聞くのは話するよりも難しい。
私が立ち上げたカナリアコミュニケーションズという出版会社がある。
処女作は、ご縁があってあの田原総一朗氏だった。
出版会社として処女作を誰にするかはとても重要な判断であった。私はその時の田原さんのサンデープロジェクトという報道番組などで大ファンであったので本の企画をいろいろ考えてみた。
ある時ふと思いついたのが田原さんの聞く力である。
もともと、私は人の話を聞くタイプである。
だからこそ、聞くことに興味があった。
田原さんの本が出版できる機会があると聞いて、そもそも田原さんはどうやって人から話を聞きだしているのだろうかと言う興味がわいた。
ご提案したところ快く引き受けてくださりこの本が誕生した。
タイトルは“田原総一朗の聞き出す力”である。