[本文引用]
中小企業と言えば、下請けという印象を持つ人が多いと思う。
仕事の発注側と受注側の関係だが、概ね、大企業が元請け、中小企業が下請けと言う構図は、世界中の資本主義の社会では同じだ。
以前もブログにも書いているが、日本には中小企業庁の統計によると企業数は440万社ほどある。日々、減少し続けているのが日本の大きな社会問題、国家存亡の危機の一つでもある。
だが今日はその話ではなく、下請け仕事とはどういう役割でどういうもので、どういう価値があるのかを考えてみる。
元請け、下請けと区分される単純な世界ではあるが、BtoBの取引形態の実情はもっと複雑である。元請けの下請けがさらに下請けに発注することは、どんな業界でもざらにある。
私が長年関わってきたIT業界で5重構造になっていた時代はそんな遠い昔の事ではない。IT業界では1人月単価で積算することが一般的で、元請けが1人月300万円でお客様から受注したとする。それが、五重請の最下層では、一人月50万円以下だったりする。
もちろん、元請けやその次までぐらいは必要であることも多い。企業としての信用力や体力の問題でもあり、あとは、成果物に何かあった時に責任をとれるかと言う瑕疵担保責任の要素も重要になってくる。そもそも、営業力があるかないかも大きい。営業力がないと普通は、元請けにはなれない。
私が長年関わってきた建設業界でも似たような構図だ。
ただ、IT業界に比べると積算が日本全国で標準化されている分、IT業界のように単なるブローカー的な中間業者はあまり入る余地はない。
納期に関しては、下請けになるほどシビアでタイトだ。
私もこういう揶揄をよく聞いたことがある。
“大企業は、今日する仕事は明日に回すことが出来る。下請けは、今日出来そうでなくても今日するしかない”
実は、私が創業した時、ブレインワークスでは、下請け構造に甘んじることなくビジネスをやっていこうと強く心に決めた。
そして、創業し活動を始めたわけである。
しかし、そんな夢も希望も1年経たずに打ち砕かれた。
言うは易し行うは難しの体験の第一弾であった。
簡単に生まれたばかりの企業が仕事をとれるものではない。
しかも、有限会社だ。
私は、創業時に有限会社にこだわっていたので、それで通用すると思っていた。しかし現実は甘くなかった。
前職までの縁を伝って大手企業に行っても、ほぼ相手にされいない。私が31歳で創業した際に、大手企業の知り合いのところへ行くと、うちだったら、近藤さん、係長ぐらいだよねと。
別に嫌味でその方が言われたわけではないが、日本はその当時そういうビジネス文化だったという事である。まだ、ベンチャーブームがやってくる数年前の事である。
社員も一人、二人と増えてくる。定常的な仕事が必要になってくる。
きばって、元請け思考のみで突っ走る選択をしていたら、とっくに会社はなかったと思う。
思うように新規の仕事が取れず、しぶしぶ地元で知り合ったの20人ぐらいの小さいソフトウェア会社から仕事をもらった。
同じ穴の狢と仲間からの仕事と気楽に考えいていたら、見事に下請け扱い。
お互いのイザコザ、軋轢のなか、1年ほどでお付き合いはなくなったが、大企業の下請け扱いも困ったものだが、やはり、下請けの下請けに入ることは何よりもタフでシビアであった。
しかし、今にしてみれば、この時の経験はとても貴重である。
20代の会社員時代も担当した仕事が下請けであったことは何回かあったが、社長として最終責任者として受けるし受け仕事は遥かに重い。
創業時に痛感した構図通り、今も変わらず元請け下請けの世界で成り立っている。
下請けいじめの類の話は枚挙に暇がないし、時々、センセーショナルにマスメディアが報じたりする。
人間の本性のところとも直結する構図である。
人には、下請けになるより元請けになりたい本能がある。つまり、支配欲であったり征服欲だ。特に男性中心のビジネス世界では、マウンティングの本能が強く出るように思う。
こういう構図の中で、ビジネスが長年行われてくると、下請けは元請け従うという妙な常識や空気が固まってくる。だから、一度はまってしまうと抜け出すのは大変だ。
もちろん、私は、すでに書いたが、元請け下請けの関係がすべて問題だと言っているのではない。
国も常に監視の目はひからせていることの一つに、下請けいじめの撲滅がある。
ある程度、強制力を働かせて健全な方向に向けるのも大切だが、私は中小企業がもっと自ら変革するべきだと思う。
それは、一言でいうと自立である。
下請けの全てが悪ではない。
先ほども書いたように、小さいからゆえの弱点もある。しかし、中小にしかできない事がある。
それは、大企業との対比で考えて、分かりやすく言うと、現場力だ。