[本文引用]
変化がリスクを生む。
今、コロナ禍が引き金になって、様々なものの変化が連鎖的に始まっている。
この流れは、加速すると私は考えている。
このタイミングでコロナ禍に遭遇していなければ、日本は閉塞感のまま、しばらくはあまり変化なく過ごしていたと思う。
だが、すでに堰は切られた。変化を阻んでいたもの、規制されていた仕組み、生活者の意識の転換、経営者のジレンマ・・など、こういった鬱積していた気持ちが一気に変革のエネルギーに転換しつつある。
千載一遇の転換期にあるとことを自覚して、経営者が今一度注視しないといけいなリスクが新たに生じている。
その一つがコミュニケーションによるリスクである。
企業経営の世界でのコミュニケーションはIT時代の進展で劇的に変わりつつある。最終ゴールを見通すのは不可能なぐらい短期間に変化が続いている。
私が働きだした頃は、仕事でのコミュニケーション手段はシンプルだった。オフィス内では、固定電話による内線で、社外に出れば公衆電話。しばらくしてから、ポケベルをもって営業に出かけるようになった。これでも画期的だった。
簡単に説明すると、一旦社外に出てしまうと、社内のメンバーが連絡しようとすると、ポケベルを鳴らして、近くの公衆電話からオフィスに電話をかけてもらう。こんな風なやり方が先進的に思えた時期もあった。
その後、スマホでしか連絡しなくなった。今や使っていないビジネスパーソンを探すのは大変だ。
確かに、ワンストップでなんでもできる。
私も、スマホでほとんどの事をすます。
最近では、ライブ配信をスマホですることもあるし、若者の間では当たり前すぎることである。
詳細の変遷を書き出したらきりがないが、先ほどのわずか数年のポケベル全盛時代に、便利を感じた私たちは、もう随分遠い過去のものとなっている。
あと、10年もすれば、今時点のスマホをベースとしたコミュニケーション手段は、過去のものとなる。かつてのポケベルのように。
一般の人でも周知のとおり、IT環境はあまりにも変化が速い。加速していく一方である。
まあ、人間がテクノロジーや科学を本格活用してまだ400年程度だが、このまま進んでいくと、今時点の未来予測は全部外れるのではないかと思っている。
もう一度、ポケベル時代の話に戻す。この時代の次は、携帯電話時代だった。当然、いちいち、公衆電話を探す必要はなくなった。そして、歩きながらの会話ができるようになった。
これだけでも、ビジネスのやり方や生活は劇的に変わった。だが、すでにその時の恩恵や変化は忘れている。
どこからでも、いつでも、誰とでも、その気になれば会話ができる。
このタイミングで、戦後の経済復興の過程で、長年積み上げてきたビジネススタイルは根底から変わった。それは悪い方にだ。
つまり、入念な準備や段取りが疎かになった。いつでも連絡ができるという状態が、仕事をあいまいに、無計画で進められるという錯覚を助長するきっかけになった。
待ち合わせで考えてみたらよく分かる。
ポケベル時代に、駅前の待ち合わせで、遅れることを面会相手に伝えることはほぼ不可能だった。
ところが、今は5分前ぐらいにでも、ゴメン遅れる。あと10分。こんな感じの会話で済むようになった。そうすると、時間を守ると言う日本の習慣も崩れだした。
それと呼応するかのように、携帯電話を使ったメッセージ交換ができるようになってきた。そして、今はスマホでメッセージが当たり前になった。
今、先ほどの待ち合わせで遅れるかもしれないことを電話で伝える人がどれぐらいいるだろうか。ほとんどの人がメッセージやチャットだろう。
これが当たり前になってくると、今度は直接電話して、遅れます。ゴメン。という方が失礼に感じることもある。
それに加えて、待っている側も、5分前になっても来なければ、ほとんどの人が、スマホをチェックする。もしかして、メッセージが来ているのでは。
これは、他人ごとではなく私のいつもの行動でもある。
慣れと言うのは怖い。
こういう感覚が、昔ながらのビジネススタイルにに良くない影響を及ぼしてきた。
今から振り返ると10年ぐらい前からではないだろうか。
そこに、デジタル世代、スマホ世代の若者が社会人としてどんどん増えてきた。
アナログ世代、デジタル世代と明確に分けるものではないが、概ね若い人はデジタル世代。当たり前にスマホで生活しスマホでビジネスする。
アナログ世代は、スマホでビジネスは一応しているが、体に染みついたものは、アナログ的な仕事のやり方だ。
少なくともアナログ世代で、スマホ対応が完璧に見える人でも、心のなかは、アナログである。
これは、こういう世代と接していて分かる。
私ももちろん、ITの仕事をしていて、毎日、スマホ、パソコンを使って仕事しているが、心のなかはアナログであり、基本の仕事のスタイルもアナログが全てベースだ。
あと、10年もすれば、今は過去のものとなり、次の進化した時代になる。
常に便利が不便の始まりであり、人間は、これを永久に追っかけていくことだろう。
だからこそ、経営者は、経営リスクの一つとして、コミュニケーションによるリスクを重要視して、常に率先垂範して、最適なコミュニケーションを受動的でなく能動的な行う組織へと導く責任があると言える。