[本文引用]
業種業態、仕事の内容によるが、どこの会社でも誰かが何かの調べものをしていると思う。
当社でも、常に私自身や社員が調べものをしている。
調べる仕事を2つに整理してみる。
一つは、自社でこなしてきた仕事やプロジェクトのやり方やノウハウである。いわゆる過去事例、類似事例を調べて活用することでもある。これはどこの会社でも日常茶飯事だと思う。
感覚的なものでいうと、この調べる時間は企業活動の中でも相当なウェイトだ。それは言い換えれば、調べる、探すコストは膨大であるということである。
ITがなかった時代であれば、整然と分類された書類棚にキングファイルがあって、その情報を必要な時に参照する。調べるといってもシンプルだった。そう、以前の病院では当たり前だったが、受付の後ろに見えている患者のカルテと似たような感じだ。
こういうアナログ的な感覚であると、整理整頓ができている状況というのは、誰にでもすぐに分かる。病院であれば、患者としてはとても安心感がある。
今は企業も病院もデジタル化が日々進んでいる。こんな時代は、何かを調べる、探すことは、ほとんどがパソコンの中になる。
デジタルの世界での情報の管理はとてもやっかいだ。見えない分、整理整頓がいい加減になるし、コピーが自由にできるがゆえにマスター管理が疎かになって最新がどこにあるか分からなくなる。
結果、パソコン内で、四苦八苦して時間を費やして色々と探すはめになる。今流行りのITは本来は上手に使えば効果的なツールではある。
しかし、これでは本末転倒でITを使わなかった方が、調べものの時間短縮になっていたりする。
もう一つの会社での調べものといえば、様々な調査がある。
マーケティング調査、コンペティターの調査、業界動向、企業の実態調査・・何かと企業は、経営判断に関わる情報や社会の変化を調べる。
昔であれば、リサーチ会社に委託するか、コンサルタントに教えてもらうか、シンクタンクから調査レポートを買うかだろう。こんなオーソドックスな調査しかできなかったが、その分コストも明確だった。
今は、全く様相が違っている。簡単にいうと、パソコンやスマホ一つあれば、たいていの事は調べることが出来る。インターネットで検索したりSNSの中から見つけたりできる。20年前に比べると、とても便利になった。
もちろん、簡単に調べられるといっても、それは情報が溢れている世界であり、玉石混交、真偽入り交ざった情報が沢山ある。そんな中で、自分が欲しい情報を探し当てて、数多の情報源から抽出して、気の利いたレポートにまとめるのは至難の業だ。
こういう調べる仕事の怖いところは、自分の仕事スキルの勘違いが起こるということだ。それは、調べる仕事の結果の良し悪しの判断は難しいからだ。ちなみに、同じことを数人でやってみると、歴然とした差が見える化できる。本来はコスト削減につながるネット検索の方法が、とんでもないコスト増になりかねない。
そもそも、調べる仕事は、個人差が付きやすい。
今回は、社内での過去の事例やノウハウを調べる仕事と、社外にある様々な情報の調査仕事を例にした。この2つだけで考えてみても、一つの会社で行われている調べる仕事とはとても膨大であると分かる。
だから、会社としては、この調べる仕事にメスを入れて、見える化することが大事になる。
その第一歩は、調べ方を標準化することである。
簡単に言うと、調べるためには第一歩としては、仮説が必要である。そして、どこを探せばよいかを明確にする必要がある。こういう調べる仕事のやり方やプロセスをきっちり標準化する必要がある。
もう一つは、作業時間を明確に記録化することが重要だ。いわゆるABC(activity based costing)である。日本語では、活動基準原価計算となる。調べる仕事は宝探しのような結果オーライ仕事になりがちである。だからこそ、調べる仕事の標準的なプロセスに則って、何にどれぐらいの時間を費やしたかを記録しそれを分析して、改善を進める必要がある。
IT化が進行すればするほど、無駄な調べる時間が増大しているのが会社の実情だと思う。
以上