[本文引用]
BtoBビジネスを中心に行っている会社であれば、入札マーケットの存在を知っている経営者も多いと思う。
いわゆる官公庁自治体が企業に発注する業務で、種類は多岐に渡る。
道路や公園などの社会インフラの整備やイベントやセミナーの運営、様々なアンケート調査、新産業や環境ビジネス、農業ビジネスの市場調査などもある。実に多岐に渡る仕事が国や自治体の予算の中から、民間企業に発注される。
発注の形態は基本的には入札だ。中小企業にこのマーケットに参入を促す動きは随分前から国などが行ってきた。
しかし、現実は、入札マーケットの参入のハードルは高い。まずは、入札資格をクリアーするところから始まる。
業者登録をして、入札資格を獲得したとしても、必ずしもどんな案件でも入札機会が得られるわけではない。
個別案件ごとに参加資格や様々な入札に関する前提条件をクリアーしないといけないことも多い。
私の会社では20年近く前から、地元神戸の自治体を皮切りに、小さな案件を一つずつチャレンジしてきた。以来官公庁や自治体の案件は数多くこなしてきたが、未だに、入札マーケットのハードルは高いと思う。
もう20年以上前、ある大手のIT企業が、1円入札をして社会問題になった。
前工程の仕事をとにかく獲得しておいて、後工程の仕事で落札を狙った手法だ。
この頃、IT業界が産業として確立されつつある時代で、こういったITの巨大企業と役所の関係を揶揄してITゼネコンという言葉が流行った。
当然、それ以前の時代は、建設業は公共投資で活況を呈していて建設業の談合は特に有名だった。
あれから年月を経て、入札マーケットはとても健全化してきたと言えるが、やはり、大企業が有利なマーケットであるのは疑う余地はない。
私の会社の業界でも、やはり老舗企業が圧倒的に強い。公共の仕事の原資は税金であるから、適正に公平に活用しないといけない。
だから、失敗は出来ない。質も良くないといけない。そうすると、発注する側も当然に実績重視となる。
例えばハードルのひとつ。入札の仕様書に書いていることは、類似実績の有無。
要するに、公共の似たような業務の実績がないと、入札資格がないとなる。
たまに、価格競争の入札もあり、中小企業としては、こういう案件に果敢にチャレンジして実績を作るしか方法が他にはほとんどない。
確かに、実績が乏しいところへの発注はリスクだろう。
ただ、官公庁や自治体は一方で公共の入札マーケットに中小企業や新興企業の参入を促す。
見かけと実態の乖離が大きすぎる。
長年やってきて思うことは、やはり、チャレンジする機会は増やすべきで、社会インフラなどの社会生活に影響が出るようなものは、実績重視。
一方、新産業の創出などの革新的案件などは、縛りをなくして、自由な競争の場にする。
そうすると、中小や新興企業の参入障壁が低くなる。結果、失敗案件を増えるかもしれないが、そこで力を得た企業が成長し次に活かす。
民間企業では当たり前に革新的取り組みが推奨されている今、公共の仕事にもそういう要素が必要なのではないかと考えている。
以上