[本文引用]
信用残高という言葉を、皆さんは聞いたことがありますか?
誰しも知っているのが、現金残高、預金残高。
まあ、私も20代の頃は毎日のように、少ないサラリーゆえに預金残高を気にしてながら生活していたので、お金の増減には敏感な時期だった。
今は、その時とはくらべものにはならないが、会社経営をするようになり、日常で資金の増減を気にしている。私に限らず中小の経営者で、資金の残高を気にしない人はない。いわゆる資金繰りと言うものである。当然、マイナスになると会社は一大事だ。
今回は、経営の話ではなく人付き合いの話として、信用残高について書いてみる。
私がこの信用残高という考えを気にいって、日常の仕事で使いだしたのが約20年前。
その当時、当社は顧客満足度向上を企業支援のコアサービスとしていた。時は不況の真っただ中、顧客の奪い合いの激化の時代。
そういう厳しい経営環境で、如何に自社の顧客を囲い込み生涯顧客化するか。
どの企業も最大の経営課題の一つになっていた。もちろん、今はそれはもっと厳しい経営環境になったと言えるだろう。
横文字で言えば、CSの向上。CSとはCustomerSatisfaction の略だ。
横文字ついでに、LTVは知っているだろうか。LifeTimeValueの略である。顧客の生涯価値という風な解釈で良いと思う。人間の人生を軸に考えて、ある顧客と一生付き合うことが出来れば、相当な買い物をしてくれるロイヤル顧客ということになる。
もちろん商品を無理やり売りつけてはいけないが、よくあるお得意様ということにできれば、企業経営も安泰だ。
こういう類の仕事に20年前は没頭していた。
その時に顧客との信用残高を如何に高めるかにこだわって企業のご支援をしていた。
正直、これで顧客に大きな変化が生まれたかと言うと、それは経営者次第だった。身もふたもない話だが、支援などはたかが知れている。
経営者自身が、心底顧客をどういう風に大切に考えているかによって結果は決まる。
前置きが少し長くなったが、これを仕事以外の人間関係に置き換えてみる。
人間は千差万別。人付き合いが苦手な人もいれば得意な人もいる。もちろん、これは一概にどっちのタイプかと区分する話ではない。
私も、両方に見えるタイプだし、自分でも人付き合いが苦手と得意が共存していると思っている。そもそも、子供の頃は極端な人見知りで、初対面どころかある特定の人でも話しできるようになるまでには何回も会わないとできないタイプだった。今でもそういう自分の昔の感覚を感じる時もある。
子供の頃引っ込み思案で、大人になってから人前でペラペラしゃべるようになった人は、世の中に沢山いる。だから私もその一人だと思っている。
では性格が変わったのか?と質問されたとしたら、それは違うと断言できる。
今でも私は、初対面の人には神経を使う。ただ、昔と変わったことと言えば、何十年も人と会う仕事をしていると、対処方法と言うのが分かってくる。
この話は別の機会で書くとして、個人個人で、生活や仕事の中で、人と会う総和の時間は違う。1日1人しか会わない人もいれば、10人、20人会う人もいる。個人差はあるとしても誰にとっても初対面という場面はしんどいと思う。
そういう時の信用残高を考える。
例えば、自分の親友に会う時に、ストレスになる人がいるだろうか?あるいは同じ会社で10年働いていて、同僚とのコミュニケーションがしんどい人がいるだろうか?
どうして、こういう関係の人と接すると楽なのか。それは信用残高があるからである。
仮に信用残高がなければ、良好な人間関係が存在しないのだから、それは別の問題になる。
そして、この信用残高はお互いさまの話である。
人間関係の信用残高に借り入れがあってはいけないのである。もちろん、これはお金の話でもない。恩義の貸し借りに近いかもしれない。
初対面で神経を使うのは、信用残高がゼロというより、尺度が分からないからである。
信頼する人からの紹介であれば、最初から信用残高は高いだろう。もちろん、これは肩書とか地位とかお金を持っているとかの話ではない。人間力、人間性の信用残高である。
書き出したらきりがないので、続きは次の機会にするが、この時に大事なのは、信用残高が高い人との付き合いはできるだけフランクに気軽にするのが良い。ここにも地位や立場は関係がない。
もちろん礼節は必要だが、信用残高の高いもの同士であれば、良い意味で手抜きができる。
こういう間柄の人間関係がしっかりあれば、初対面の人に対しは余裕をもって、少しずつ信用残高を高めていくお付き合いをすればよいと私は考えている。
以上