[本文引用]
11月18日夕刊の日経新聞で、思わずそうそうと思える記事に出合った。
見出しは、“副業は農業”解禁広がる。
記事を読めば、副業として企業や自治体が農業なら認める。こんな内容の記事だ。
コロナ禍のなかで、日本もようやく副業解禁の流れだ。私も全体的には随分前から賛成だ。
しかし、各論では様々制約がないと無法地帯と化す。
一つは情報セキュリティーだ。副業というのは機密情報の漏洩につながるリスクがある。
また、利益相反という事がある。これは企業の取締役なら当たり前の義務だが、会社員に関しては、業種や仕事の重要度にもよるが線引きはとても曖昧だ。
だから、雰囲気的にはこういう問題が少ない農業ならOKというニュアンスが記事にも見て取れる。今の世の中の常識からしたらそれはそれで良いだろう。
しかし、この記事も少し触れているが農業にはもっと大事な役割がある。
農業産業としての維持発展だけであれば、労働力をいかに確保するかの課題に帰着する。言うまでもなく今の日本の農業の最大の課題は、労働力不足である。
そして高齢化の波が真っ先に襲っている産業だ。長い間若者が敬遠する仕事だったし、そもそも、田舎での農業が大半だ。特に山間部での農業など条件的に厳しい農業が日本の特徴でもある。
段々畑、別名“棚田”として観光地化する動きもあるが、こういう農地を維持発展することは容易ではない。
話は変わるが、最近読んだ“農家が消える”に衝撃を受けた。
部分的にはすでに私も把握していた農業の問題ではあるが、明治維新以来の開国からの先進国化への流れの中で、いかに農業が衰退してきたか。
そして今や農家が消えるという国の存亡にかかわる時代に直面しても、遅々として課題解決の動きは遅い。
そういう意味では、一人でも多くの人が農業に関心を持ち、副業としてでも労働力が増えることには賛成だ。ただ、残念ながら間に合わないと、この書籍は警告する。この本は新刊ではなく2018年に発刊されたものだ。
覚えている人もいると思うが、実は、20年ほど前の時の首相は農業を憂いて大胆な発言をしている。確か私も新聞記事で目にしたことがある。それは日本は徴農制を取り入れるべきだという論調だった。他にも徴農制を推す人もいる。
方法論にいては、実現するしないにかかわらず如何にも物議をかもしそうな考えではあるが、あれからすでに20年が経過した。
今月、農業の未来を創ることに日々取り組んでいる経営者が結集して、アグリマスターズという会社を設立する。
一義には、日本と世界の農業ビジネスの発展に寄与する事ではあるが、もう一つの大きな目的は、できるだけ多くの人に農業の大切さを知ってもらい、そして農業に関わってもらうことである。
これは必ずしも農作業をすることではない。
何よりもまずは、農業の現状とその役割と価値を正しく学ぶことが大切だ。そして、日本人全員が自国の農業に関して維持発展の義務と責任を持つ。法律で縛る話でもない。自治体で制度化する話でもない。
子供の目線で考えるのが一番分かり易いが、極端に言えば、私達人間が生きる上での一番大切な食料をどうやって自分たちで確保するか。
しかも、それは壊れかけている地球環境をいかに回復するかと密接であり、自然との協調と共生の上で実現しないといけない。今の経済の中心にいる人たちは、農業に関しては無関心だったり疎い人が多すぎる。
それは、ものづくりの現場を子供の頃から知らなかった人に多い。人間の生きる根源の食料の生産現場の実感がなく、遠い世界でビジネスを廻してきた人たちに多い。
だからこそ、誰が日本の農業を変えるかは重要だ。それには経済人ではなく日本国民一人一人の力が必要なのである。
それをアグリマスターズで全速力で波及していこうと身も引き締まる思いである。
以上